みなさん、こんにちは。
イラストレーターのサラ・ガリー と申します。
この記事は、もうすぐ生後4ヶ月になる息子と過ごしながら身近なものをスケッチした1週間の記録です。
新型コロナウイルスのパンデミックで日ごとに不安が募る中、家の中にある馴染みのものや散歩の途中にみつけた植物などをスケッチする時間は、わたしの緊張を緩ませてくれ、自分の手の届く範囲の世界を、より一層、愛おしく思わせてくれました。
使用した画材は、「筆之助 しっかり仕立て」と、無印良品の「メモパッド」と「らくがき帳」です。
○月×日(月)晴れ
息子を抱っこ紐に入れて、近所を散歩。
高台にあるマンションのはじっこで、満開の桜をみることができた。
空を覆うような見事な姿。
木の幹や根っこからも細い芽や枝がのびていて、小さな花がたくましく咲いている。
息子は目をまんまるくして見ていた。
はじめての桜、どんなふうに映っただろう。
いっしょにみられて、本当によかった。
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◎素敵だなと思った部分から、素直にスケッチしていきます。
○月×日(火)晴れ
息子が起きたら、まずベビーベッドからおろして、カーテンを開け、オムツをかえる。
それから抱っこして台所に行き、
冷蔵庫に貼ってあるバッファローのマグネットに挨拶する。
「バッファローおじさ〜ん」
必ず返事をしてくれる。
「おお〜、○○ちゃん、おはよう! よく寝たねえ」
今日はバナナ島でピクニックしてたんだって。
「バナナ島のバナナはおいしいよ、もぐもぐ」
いつもうれしそうなバッファローおじさん。息子はじっと見てる。
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◎筆圧をかえることで、1本のペンで様々な線を表現できます。
○月×日(水)曇り
近所の八百屋さんににんにくを買いに行った日。
いつもより混んでいて、外出自粛のための買いだめをしている人が多いのかもしれないと思った。
ここの八百屋さんはたぶん家族経営で、おじいちゃんおばあちゃん、お父さんお母さん、お兄さんお姉さんが、てきぱきとした連携プレーでハキハキと営業している。
いまは人の多い空間にあまり長くいられないから、パッと買って、パッと出た。寂しい。
ちょっと怖そうかなと思っていたお姉さんが息子に笑いかけてくれて、うれしかった。
青森産にんにく、3個で90円。
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◎見えるもの全てを描こうとせず、モチーフの中に余白を残すのが好きです。
○月×日(木)晴れ
これは近所の「ピアノ調律学院」の前にある植え込み。
いろんな形の葉っぱが一か所に密生していて、こういうのは見つけるといつもうれしくなる。
いろんな色、形、手触りの葉っぱ。自然はすごいなあ、と、描きながらつくづく思う。
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◎自然から学ぶつもりで描いています。
○月×日(金)晴れ
今日も近所を散歩。家の周りを20分ぐらい、その間にたくさんの花壇をみた。
公園や、アパートの入り口や、家の前の小さなスペース。ここに花を植え、日々手入れする人たちのことを想像してみる。花が咲いていてうれしいです、ありがとう、と伝えられたらいいのに。
大きな公園に人っ子ひとりいなかったので、花壇の前で息子に「さいたさいた」を歌ってあげた。
わたしの描く絵も花壇のような役割になれるかな、と考えた。
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◎あ、これ描きたいな、と思うものだけを描きます。
○月×日(土)曇り
これは、子どもの頃にグランマがくれた木の置物。
引越しや模様替えをするたびに場所を転々とさせてきたけれど、いまは台所の本棚に落ち着いて、いつもこちらを見守ってくれている。
スケッチして、あらためて、手触りや匂いを感じられた。どんな人が作ったんだろう。グランマはどこで買ったのかな。グランマが恋しい。
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◎毎日見ているものなのに、描くことで新しい発見があり、ますます愛着が湧いてきます。
○月×日(日)雪
買い占めをしたわけでは決してないのに、なぜか冷蔵庫の中がリンゴだらけになってしまった。せっかくなので、全部出してきて並べてみる。
みんな、違う土地で生まれ、それぞれの木から収穫されて、たまたまここに集まっている。
リンゴ農家の人のことを思った。トラックで運んでくれた人のこと、八百屋さんのこと。
わたしはリンゴを食べる。母乳がつくられ、息子が飲む。
みんな繋がっている、本当に繋がっているんだと、
ニュースを見ながらじっと感じる。
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◎スケッチは、モチーフをより好きになるためにするもの。構図やバランスは大切じゃありません。
スケッチをすることで、目の前にあるものをよく知ることができます。
「ここってこんな形だったんだ」「こんな模様があったんだな」
手を動かしながら、対象をもっと好きになっていることに気づきます。
上手に描くためじゃない、描きたいから描くスケッチ。
ぜひみなさんも試してみてください。