水彩紙いろいろシリーズ、第2弾!
「紙について知ろう|vol.3 画材別おすすめの紙<水彩編>」でABTや水彩絵具を使用する場合におすすめした水彩紙。
水彩紙と一言で言っても、その素材はさまざまで水彩紙を選ぶ基準の一つとして素材は大事なポイント!
このシリーズでは、素材別の違いや魅力についてお話しします。
今回はコットン100%で作られたクレールフォンテーヌの高級水彩紙「FONTAINE(フォンテーヌ)編」。前回の「BAMBOO(バンブー)編」でも少し触れましたがコットン素材について深掘りしていきます。紙目の違いや選び方の参考に、「FONTAINE」を使ったスケッチジャーナルをご紹介します。
コットン水彩紙の特長は?
「FONTAINE」に使われているのはコットン素材、衣類の素材として馴染みがあるコットンと同じ綿の繊維から作られています。
<コットン素材の特長4選>
1.透明水彩の技法がキレイにできる
透明水彩の主な技法は、「にじみ」、「重ね塗り」、「グラデーション」、「ウォッシュ」など。これらの技法をより綺麗に細やかに表現できます。
2. 吸水性・保水性が抜群
保水性が高いことから、平塗りやグラデーションが綺麗に表現できます。また吸水性の高さから、紙の表面が濡れている状態を利用して絵の具を塗っていく技法「ウェットインウェット」でぼかしやにじみの表現がしやすいです。
3.消しゴムを使っても毛羽立ちにくい
木材パルプと比較すると消しゴムを使っても毛羽立ちにくい特長があります。ただ消しゴムで強くこすると表面のサイジング(にじみ止め加工)が取れて、にじみやすくなるので注意が必要です!
4.長く保存しやすい
一般的な木材パルプには、光や酸素に弱い成分が含まれています。これが経年変化で黄ばみや、サイジング(にじみ止め加工)が劣化する原因となります。しかし、コットンにはこの成分が少ないため、長期保存による劣化が抑えられます!
またクレールフォンテーヌの水彩紙はアシッドフリーペーパーかつ、中性紙なので、経年劣化がより抑えられます。
このような特長を持つコットン100%で作られた紙は「コットン紙」と呼ばれ、数ある紙の種類の中でも高級品として、プロの方たちの作品作りに使われることが多いです。
価格が比較的高いため、木材パルプと混合させた水彩紙もあります。
コットン素材の特長を持ちつつ、コットン100%より購入しやすい価格なので紙を選ぶ時の参考にしてみてください。
どんな仕上がり?「FONTAINE」に描いてみた!
クレールフォンテーヌの水彩紙「FONTAINE」は、蛍光増白剤不使用のナチュラルホワイトで、荒目、中目、細目の3種類の紙目があります。
たかが紙目、されど紙目。この目の大きさによって作風が大きく変わるため、紙目選びはとても重要なのです!
例えば、荒目はしっかりと凹凸があるので、大胆で個性的な表現ができます。中目は適度に凹凸があるので、水彩らしい仕上がりになります。細目は凹凸がほぼなくなめらかなので、繊細な描画に向いています。
簡単なモチーフをABT(上)と水彩絵具(下)で、それぞれの紙目に描いてみました!
色の広がり方やにじみ、筆の跡、発色の仕上がりも違うのが分かりますか?
モチーフの左上ではリフティング(塗った後に水のつけた筆などで紙をなぞり、絵の具を浮かす技法)を使い、吸水性の比較をしてみました。
また色鉛筆で描くと、よりそれぞれの紙目の雰囲気が分かりますね。
どの紙目を選んだらいいか、わからないときはまずは中目でチャレンジするのがおすすめです。
番外編:木材パルプ100%の「AQUAPAD」(中目)にも描いてみました!
にじみはコットン100%の「FONTAINE」の方が細やかに表現できています。
水分の吸収スピードがコットン素材よりゆっくりなことから、練習には木材パルプ素材、本番にコットン素材を選んでもいいかもしれませんね。
ブロック派?スケッチブック派?
<ブロックタイプ>
水彩紙のスタンダード、ブロックタイプ。
水彩絵具を使う場合、他の画材と比べて紙に乗せる水分量がとても多くなります。
水彩用の紙と言っても、たわんでしまうことがほとんどで、四方をマスキングテープで留めたり、水張りをしたりする方が多いです。
「FONTAINE」の全シリーズは四方糊固めされているので、水張りすることなく使えます。
<スケッチブックタイプ>
「FONTAINE」を糸綴じ製本した商品「ロディアタッチウォーターカラーブック」は日本の市場ではあまり見られない、糸綴じ製本されたコットン100%の水彩紙スケッチブックです。
持ち歩きにちょうどいいサイズ感と、SNS投稿に向いている正方形やランドスケープ型などさまざまな形が展開されているのが特長。両面サイジング(にじみ止め加工)により、全てのページに描くことが可能です。
スケッチジャーナルで自分だけの思い出を残そう!
どんどん暖かくなってお出かけが楽しくなるこれからの季節、手軽に始められるスケッチジャーナルで自分だけの思い出を絵に描き残してみませんか?
今回はトンボ鉛筆の「ABT」「色辞典」とクレールフォンテーヌの水彩紙「FONTAINE」を使用したスケッチジャーナルを紹介します。長期保存に向いているFONTAINEはスケッチジャーナルに向いており、紙目や画材、紙のサイズによっても仕上りの雰囲気が大きく変わります。
【1】おいしかったものを記録に残してみよう!
【使用画材】
・ABT
・木物語 B
・水筆
・ロディアタッチウォーターカラーブック 15x15cm 中目
ある程度凹凸があり扱いやすい中目は、これからスケッチジャーナルを始める方におすすめの紙。若干ざらつきのある紙目は描いたものに独自の風合いを持たせ、特に自然のものや食べ物などを描くときに向いています。
鉛筆で線を先に描いておくことで絵全体がはっきりとし、色を塗ることでよりおいしそうな雰囲気を醸し出すことができます。
水筆を使ってぼかしたりにじませたりするところと、ABTで直接書き込むところの差をつけるとよりメリハリがつきます!
【2】はがきサイズに描いて風景を共有しよう
【使用画材】
・ABT
・水筆
・FONTAINE ポストカードサイズ 荒目
荒目の水彩紙は紙の質感が強く絵に反映されるため、広い景色や木などの大きいものや、あまり細かく書き込まないスケッチジャーナルにもぴったり!
紙目の凹凸から生まれる陰影が絵をぐっと引き立て、ABTで描いたあとに水筆で少しぼかすだけで味のあるイラストになります。
ポストカードサイズの紙は小さく持ち運びがしやすく、描いたらそのまま絵ハガキとしても使用できます。
【3】横に広い画面を最大限活用して風景を描いてみよう!
【使用画材】
・モノグラフライト 0.38㎜
・色辞典
・ロディアタッチウォーターカラーブック A6ランドスケープ細目
細目の水彩紙は紙の凹凸が少ないため、水彩はもちろんペンや色鉛筆でも描きやすく、細かい描写がしやすいのが特徴。風景や建物の細かい書き込みにも向いています。
ペンで書いた上から色を塗ることで、より奥行きなどの表現がしやすくなります。
横に広い「ランドスケープ」のブックはページの表裏どちらにもしっかり描けるようにサイジング(にじみ止め加工)が施されているため、パノラマのような横に広い景色も収めることができます。
絵に描き起こすために被写体をじっと眺めてみることで、これまでとは違った新しい発見を見つけられるかもしれません。
今回の記事を参考に、ぜひ自分だけの作品を作ってみてくださいね。