「FUN ART STUDIO」と「クオバディス・ジャパン」の特別連載がスタート!
アート表現に欠かせない「紙」をテーマに、画材別のおすすめの紙や作品レシピを教えていただきます。
はじめに
トンボファンアートスタジオの読者の皆さんの中には、紙好きさんも多いのではないでしょうか。ひとことに紙と言っても種類も用途もさまざま。そんな「紙」の中からイラストやレタリングなど “描く”ための紙ついて、画材別のおすすめの紙やそのレシピなどをこれからお話していきたいと思います。
この連載がアートを楽しむための紙選びのヒントになれば嬉しいです!
“FOR EVERY ART ITS PAPER! IN EVERY PAPER ITS SUBTELTY.”
(あなたの表現にぴったりの紙を!)
クオバディス・ジャパンとクレールフォンテーヌについて
私達、クオバディス・ジャパンは、フランスの総合紙製品メーカー 「エグザコンタ・クレールフォンテーヌ」グループの日本支社です。クオバディス、ロディア、クレールフォンテーヌ、エルバンなど歴史あるフレンチブランドの魅力的なステーショナリーを幅広くご紹介しています。
さて、クオバディスのダイアリーやロディアのブロックメモ、実はすべてクレールフォンテーヌの用紙を使用しているのはご存じでしょうか?
クレールフォンテーヌは、1858年フランス北東部のエティバルで創業し、160年以上にわたり高品質な用紙と紙製品を作り続けています。なんと製紙から商品化までを一貫して自社工場で管理するメーカーは、ヨーロッパではクレールフォンテーヌ社だけ!フランスでは、はじめてABCを覚えるノートからオフィスのコピー用紙、封筒、画材などあらゆるシーンで愛用されている国民的ブランドなのです。
“描く”ための紙もさまざま!描きたいものをイメージしてお気に入りの紙を見つけましょう!
今回の記事でご紹介する内容
・紙の種類
・画材用の紙の厚みや仕様について(厚み/サイズ/表と裏/仕様)
・画材用紙を選ぶときによく出てくる用語やマーク
■紙の種類
紙の中でも皆さんがよく耳にするのは、上質紙や画用紙ではないでしょうか。
上質紙は、化学パルプ100%を原料に製造された用紙で印刷物に最もよく使われます。コピー用紙もそのひとつ。筆記性にも優れているのでノートの中面用紙として使われているので身近な紙ですよね。
また、よく画用紙と言いますが、お子様が絵を描いたり工作したりする紙を指したり、水彩をはじめ、画法を選ばない厚手の白色描画用紙を指したり、その定義もさまざまです。
今回は、より用途が明確で画材屋さんでも取扱いの多い画材用紙の種類と特長を簡単にご紹介します。
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水彩紙
その名の通り、水彩画を描くための用紙。水分を含んだ画材を使用した際に波打たないよう比較的厚めの紙が多く、表面の凸凹加減で荒目、中目、細目など種類があります。また、表面にサイジングと言うにじみ止め加工が施されているのが最大の特長です。
おすすめ画材:水彩絵具、アクリル絵具、インク
ケント紙
表面がツルツル、とても滑らかで白色度の高い用紙。建築パースや漫画など精密で緻密なデッサンに最適です。とても強く消しゴムを使った時の毛羽立ちが少ないのも特長です。滑りが良いのでカリグラフィー初心者にもおすすめです。
おすすめ画材:鉛筆、製図用シャーペン、つけペン、アルコールマーカー
クロッキー紙
クロッキーのための用紙。クロッキーとは、スケッチの一種でいわゆる速写と呼ばれ、動きのあるものを素早く描画することです。鉛筆ののりが良いよう、表面は少しザラザラしていてラフかつ薄いものが多いです。ざっくり使えるのでアイデアを書き留めるメモ帳としても使われています。
おすすめ画材:鉛筆、製図用シャーペン、フェルトペン
トレーシングペーパー
半透明の用紙。薄いものは、トレースする際に使用されたり、厚いものはカード作りなどハンドクラフトの材料として使われたり、厚みによって用途も様々。プリンターにも対応しているので印刷して使用されることも多いです。
おすすめ画材:鉛筆、製図用シャーペン、フェルトペン
ミックスメディアペーパー
その名の通りメディア(画材)を混ぜて使用できる用紙。あらゆる画材に対応し、単独ではもちろん、自由に組み合わせて使用することができます。水彩絵具やアクリル絵具など水分を含む画材にも耐えられるよう200g/㎡~300g/㎡のしっかりとした厚手のものが多いです。安心して画材を重ねることができます。
おすすめ画材:鉛筆、製図用ペン、水彩絵具、アクリル絵具、油絵具、水彩、パステル、フェルトペン
クラフトペーパー
クラフト紙。もともとは包装用紙でしたが、あたたかみのある独特な色合いはスケッチ用にも好まれています。ストライプ状に筋模様が入った薄いクラフト紙はラッピング用にも人気です。
おすすめ画材:鉛筆、チョーク、パステル、フェルトペン、アクリル絵具
ブラックペーパー
ブラック色の用紙。紙の厚さや表面の凸凹加減は様々なものがあります。ホワイトやメタリックカラーのペンとの相性抜群、ハイライト効果を与えてくれるトレンド感のある紙です。
おすすめ画材:鉛筆、チョーク、パステル、アクリル絵具
■画材用の紙の厚みや仕様について
<厚み>
紙の厚みは一般的に連量(kg)や坪量(g/㎡)で表します。面積1㎡あたりの用紙の重さを表したものが坪量(つぼりょう)です。クレールフォンテーヌの商品は90g/㎡や250g/㎡など坪量で表示されます。用紙が重くなれば、用紙の厚みが増すので、同じ用紙の場合、90g/㎡と250g/㎡でしたら250g/㎡の方が厚いことになります。紙の種類が変わると同じ坪量でも厚みは変わってくるので要注意です。
<サイズ>
ノートなどで馴染みのあるA判、B判の他に画材特有のサイズ表記として「F」というものがあります。
スケッチブックやキャンバス、額縁などに使う画材専用のサイズ規格です。
A、B判との最大の違いは、A、B判は数字が小さくなるほどサイズが大きくなるのに対し(A3方がA4より大きい)、F判は数字が大きくなるほどサイズが大きくなるという点です。(F4の方がF3より大きい)
また、フランス特有のサイズで古くから使われているフランス規格協会(AFNOR)が制定している「AFNOR規格」と呼ばれているものがあります。クレールフォンテーヌの商品の中にも一部製品に採用されています。
<表と裏>
紙には表と裏があります。ザラザラしている方が表、ツルツルしている方が裏という決まりはなく、用紙によってその表裏も異なります。水彩紙のように表面の凹凸がわかりやすい紙は凹凸がしっかりわかる方が表、ケント紙やトレーシングペーパーは滑らかな面が表になります。表のみに特有の加工がされている用紙もあり、基本的に表を使用するのがおすすめですが、ルールはありません。
また、紙には紙の繊維の流れている向き、いわゆる「紙の目」があります。縦目(T目)、横目(Y目)とあり、紙を折るときは紙の目に沿うときれいに折ることができます。逆に、紙の目に逆らって折ろうとするときれいに折れず、折った部分が割れてしまうことがあります。
<仕様>
リングタイプ・・・スケッチブックによくあるタイプ。中面をぐるりと折り返すことができることが最大の特長。狭いスペースでも描きやすく屋外で使う場合にも向いています。
ブロック(4面糊付け)タイプ・・・水彩紙でよくみられる反りを防ぐためにパッドの4辺を糊で固定してあるタイプ。水張りせずに使えるので便利です。描いた後は、ペーパーナイフなどで剥がします。
パッドタイプ・・・パッドの1辺を糊付けしたタイプ。紙を一枚ずつ綺麗に剥がすことができます。
ブック(製本)タイプ・・・糸綴じ製本されたタイプ。耐久性があるのが特長。携帯性が良いソフトカバーや保管性がより高いハードカバー付きなどあります。
■画材用紙を選ぶときによく出てくる用語やマーク
大切な作品を長く状態良く保管したい、環境に配慮した商品を使いたい、そんな時に役立つ専門用語です。
ただし、アシッドフリーや中性紙の商品を使用しても、絶対に劣化しないわけではありません。日本は高温多湿なので直射日光や湿気などには注意が必要です!
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「アシッドフリー」
紙の変色の原因となる酸が含まれないという意味。酸を取り除き中性にすることで劣化を防ぎ長期保存が可能になります。アシッドフリーについては、世界で決められた規格というものはなく、それぞれのメーカーの基準に基づいて定義されています。
一般的にpH(ペーハー)値が7.0~9.5での範囲内のものをアシッドフリーとすることが多いです。クレールフォンテーヌではpH 8.5くらいまでの商品をアシッドフリーとしています。
「中性紙」
酸を含まない中性pH7のアシッドフリー用紙。時間が経っても描いた色彩の鮮やかさが失われることはありません。
「PEFC」
PEFC(Programme for the Endorsement of Forest Certification Schemes、森林認証)は、持続可能に管理された森林を証明する「森林管理認証」及び、その森林から産出された木材を使用して生産・加工を行っていることを証明する「生産物認証(CoC 認証)」があります。
「FSC®」
FSC®(Forest Stewardship Council®、森林管理協議会)は、木材を生産する世界の森林と、その森林から切り出された木材の流通や加工のプロセスを認証する国際機関です。FSC® 認証は、森林の環境保全に配慮し、地域社会の利益にかない、経済的にも継続可能な形で生産された木材に与えられます。
PEFCやFSC®などの森林認証マークのついた製品を選ぶことで、世界の森林保全に貢献することができます。
※クレールフォンテーヌはフランスでPEFC、FSC®を取得しています。
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今回は色々な画材用紙の基本情報をご紹介しました。
画材屋さんで紙を選ぶ時にぜひ参考にしてみてください!
次回は、「画材別おすすめの紙<マーカー編>」です。
ABTや筆之助などのマーカーに最適なペーパーや紙によってどう表現が変わってくるのかをご紹介します!
お楽しみに!