2023.3.28
【FUNART JOURNEY】tour.3 ヨーロッパのパッケージデザインを再認識してReFUN ART(前編)
ーーーーはじめにーーーーーーー
あらゆる商品に使われる「パッケージ」。簡易包装紙や袋、小包の箱など、パッケージには様々な種類があり、それに伴い様々なデザインがあります。例えば、外国のお店に行った時、見慣れていないパッケージや文字に驚いたり感動したりと皆さんもあるかと思います。
これについてもう少し知ることで、もっとパッケージや商品情報を楽しく詳しく見れるのではないかと思いました。今回は私が住んでいるチェコのプラハを中心に、ヨーロッパのパッケージデザインについて紹介し、その魅力を再認識していきたいと思います。
ーーー紹介にあたりーーー
まず前提として、日本のデザインスキルやこだわり、更には商品の数など、日本で見られるパッケージデザインは世界でもトップクラスです。そういった意味から今回私がスーパーで出会ったデザインは、皆さんが日本のスーパーマーケットやamazon、pinterestなどで見るそれらより簡素で素朴な印象を持たれるかもしれません。次に、一つのスーパーマーケットにも何百種類とパッケージ商品があり、それが数年単位でデザインの流行が変化していきます。ですので、今回の現地リサーチから欧州の各国のデザインレベルや歴史を語ることは相当難しいでしょう。
また、結果的には各商品のパッケージデザイナーの個人的趣向に委ねられざる得ないことがあります。これらのデザインセンスやニーズはインターネットの普及以降の更なるグローバル化により、今や ”その国らしさ”を見つけることは困難です。そもそもヨーロッパは多様な人種、民族、言語、国境、国籍が複雑に混ざっていて、日本人の様に日本人性を語る自意識感性は少ない傾向があります。国籍よりも自分自身の感覚が強いからかもしれません。しかしながら、今回はどうにかデザインの多様なユニークさや、文化背景の違いなどを捉えられればと思っています。
ーーー紹介対象ーーー
パッケージを使っている製品はジャンルも品数も相当な数が毎年作られています。そういった理由もあり日常的な現在のスーパーマーケットでの商品を中心に見ていきたいと思います。スーパーマーケットで並ぶ食品とそのデザインは、「その土地土地でどんなものがどのように受け取られているのかを知る指標の役割」であると「スーパー!」の著書でありデザイン評論家の渡部千春氏は言います。ヨーロッパは陸続きですから、プラハのスーパーマーケットにはEUの様々な国から来た商品が並んでいます。
ーーースーパーマーケットのパッケージーーー
スーパーマーケットに並ぶ商品とデザインは様々な条件や環境を持ち合わせています。
食品なら食品衛生法、化粧品なら薬機法だったりと、さまざまな表記規定なども関わってきます。
消費者が棚の商品見るのは0.5秒と言われるように、消費者は瞬間にイメージを抱き、もしくは視界や意識に入りすらしません。たくさんの商品の中から注目された後には、手にとって吟味されることもあります。
ーーーデザインの仕事ーーーー
商品の値段や中身の品質が重視される中、ビジュアルデザインの役割は他のジャンルとは異なる評価軸があります。それに加えて、持ち運びやすい、壊れにくいなどの重要性もあり、他角度からデザイニングが必要になります。
パッケージデザインの成功とは商品の売れ行きです。逆に言えばカッコよくないと思われても売れれば成功となります。ですのでデザイナーは「自分がこうしたい」ではなく、「売れるためにこうする」を追求しています。新しく話題になるデザインを考えつつ、今までのブランドイメージを外しすぎでもいけません。消費者にとっては”自分が知っている”ということも商品の信頼に繋がるからです。
ーーーパッケージとデザインとはーーー
そもそもパッケージデザインとはどういったものでしょうか。まずは文字通りパッケージとデザインについて整理してきたいと思います。
パッケージ:
パッケージとは、その内容の品質管理して相手に受け取りやすく包んだもので、昔はその土地土地で採れる木の葉や皮などを使っていました。時代と共に進化し続け、科学やデザインの発展と共にパッケージは複雑になり、さまざまな色や素材のパッケージが登場するようになりました。
18世紀から19世紀にかけ、技術の進歩により包装の大量生産が可能になり、さまざまな商品の輸送や小売りに欠かせない包装の標準化が進みました。第2次世界大戦を境にプラスチック産業の時代が始まり、スーパーマーケットの登場と共にパッケージとデザインの需要は急激に上がっていきました。
グラフィックデザインは基本的に平面ですが、パッケージデザインは立体が基本です。商品という中身があるもののデザインなので、印刷方法から組み立て構造まで総合して考えるプロダクトデザイン力が必要となります。
デザイン:
“計画を記号に表す”という意味のラテン語、designareからデザイン(英:design)の概念が生まれました。歴史は諸説ありますが、19世紀のイギリス帝国、産業革命とアーツ・アンド・クラフツ運動をきっかけに、デザイン理論が始まり、20世紀初頭から広く用いられるようになりました。当時は「装飾美術」や「美しさ」などの見た目が重視されていました。
近代以降は「使いやすさ」などの機能のあり方を実現するために創意工夫されるだけではなく、「人を動かす」「人や社会に価値ある目的を見出し、計画、表現する一連の過程全体」もデザイニングの大切な要素になっています。
デザインが売上の9割、と言われる程重要視され、その中心となる商品を2次元的なヴィジュアルで表現するために必要なのが、グラフィックデザイン力です。
最近では、プロではなくても、ましてやお金を払わなくても誰でも簡単にデザインをサポートする様々なアプリ(CanvaやPromeoなど)があります。さらに、昨今ではAIが発展し、AI漫画や作詞などが作れる時代です。パッケージデザインにもこれから大きな変革をもたらすのではないでしょうか。
パッケージデザイン:
パッケージデザインは、最初は単なる商品の保護のためだったのが、その製品が消費者に情報を伝えたりコミュニケーションをとったりするための重要な要素になりました。パッケージは物言わぬセールスマンとL.チェスキン氏が言うように、パッケージはそのブランドと消費者の最初のビジュアルコンタクトとしての役割も担うようになりました。デザイナーは、その商品のコンセプトやターゲットを考え、ヴィジュアルに落とし込んでいきます。例えば食品であったら、その味や食感、シズル感(水々しさ)などを視覚的に表現し、商品の魅力を伝えていきます。商品がおいしく見えるか、イメージと味があってるか。それに企業のブランドイメージが重なるか。商品の特徴をちゃんと表せているか。これをトーンアンドマナーと言います。
商品ブランドやロゴ、中身へのイメージはもちろんのこと、パッケージは価格や原産地、原料、エネルギー表やバーコードや機関認証ロゴなどの記載など様々な点も考慮しなければいけないため、全てのパッケージには他角度からの配慮がされているのです。デザイン領域は環境デザイン、プロダクトデザイン、グラフィックデザインなどの領域がありますが、パッケージデザインはそれら全ての要素が必要とされるのです。
それでは後半編へと続きます。
〜〜〜前半終わり〜〜〜〜〜