「FUN ART STUDIO」と「クオバディス・ジャパン」の特別連載!
アート表現に欠かせない「紙」をテーマに、画材別のおすすめの紙や作品レシピを教えていただきます。
前回は「紙」について基本的なことをお話しました。今回から何回かに分けて、「画材別のおすすめの紙」を紹介したいと思います。
まずは、イラストやレタリングに欠かせない人気画材のマーカーにおすすめの紙について。
手帳デコやスクラップブッキング、デッサン、漫画、建築パースなど様々なシーンで使用するマーカー。マーカーと紙の組み合わせの違いでどう表現が変わってくるのかと最後におすすめの紙を使った簡単レシピを紹介します!
マーカー(マーキングペン)について
「マーキングペン」は毛細管現象によってペン先にインクが誘導されて書くことができるペンの総称です。一般的に「マーカー」「サインペン」「フェルトペン」などとも呼ばれています。毛細管現象を利用しているので、書く時にほとんど筆圧がいらず、上向きでもインクが出るのが特徴です。
ペン先の形状は極細芯~太芯の他、蛍光マーカーのような斜めにカットされた芯や筆芯など様々!インクの特性もいろいろあり、マークキングするだけでなく、文字を書く、描く、線を引くなど様々に使われています。
インクの種類
マーカーのインクは溶剤と着色剤の組み合わせで大きく4種類に分類することができます。
水性と油性の違い
インクは溶剤の種類により「水性インク」と「油性インク」の2つに分かれます。水性は溶剤として主に「水」を使用し、油性は主に「揮発性有機溶剤」が使用されています。
・水性インクの特徴:にじみや紙の裏写りが少ない、匂いが少ない
・油性インクの特徴:ガラス・金属・プラスチック面などの水をはじくような非吸収面にも筆記できる、乾きが早い、匂いがある
染料と顔料の違い
溶剤に溶ける着色剤を「染料」、溶けないものを「顔料」といいます。
・染料インクの特徴:発色がクリアで鮮やか、色数が多い、耐光性・耐水性に劣る(退色しやすく、水に溶けやすい)
・顔料インクの特徴:染料に比べて鮮やかさが劣る・色数が少ない、耐光性・耐水性に優れる(退色しづらく、乾くと水に溶けにくい)
「ABT」や「プレイカラー」は水性染料インクのため色鮮やかで色数も多く、水でぼかしたり、色をなじませたりすることができます。一方で水性顔料インクの「筆之助」は乾くと耐水性があります。
皆さんが普段よく使っているマーカーはどの種類でしょうか。インクの特性を理解しておくと、紙を選ぶ際やペンを組み合わせて使う際にも役立ちますよ!
マーカーの種類別・紙との相性
今回は、①水性染料マーカー、②水性顔料マーカー、③油性染料マーカーをいろいろな紙に実際に書いて試してみたいと思います。紙は、皆さんもよく使われる下記の5種類(A~E)で比べてみます。発色やにじみ、裏抜けや色を重ねた時の毛羽立ちや波打ちなど気になる点をチェックします。
(それぞれの紙の特徴については、前回の記事をご覧ください)
写真左から
A 上質紙(70g/㎡)
B 画用紙(250g/㎡)
C ケント紙(250g/㎡)
D クラフトペーパー(200g/㎡)
E トレーシングペーパー(40g/㎡)
※今回は一般的な厚みの紙で試しました。同じ紙でも厚みによって結果は変わってきます。特に裏抜けが気になる薄い紙に描く時は、目立たないところで一度試し書きするのをおすすめします。
※ペン先が細く硬いマーカーは紙がひっぱられるので手でおさえて書くことをおすすめします。
※クラフトペーパーは紙の色がインク色に影響するため、マーカーの色によっては思い通りの色に発色しないので注意が必要です。
それでは早速、それぞれのマーカーごとに紙との相性をそれぞれみていきましょう!
今回はトンボ鉛筆のマーカーを使って試しました。「◎○△✕」の4段階で評価しています。
①水性染料マーカー(使用マーカー:ABT)
水でぼかしてみると…
②水性顔料マーカー(使用マーカー:筆之助)
③油性染料マーカー(使用マーカー:モノツイン)
試した結果をまとめてみました!
あくまでも主観ですが、私達がマーカーにおすすめするのは「C」のケント紙です!
表面が滑らかで白色度が高い紙なので使用するマーカーを問わず、滑りが良いのと発色も鮮やか、エッジがはっきり出てにじみづらかったです。重ねて塗っても毛羽立ちがほとんどありませんでした。レタリングで細く描く場合もイラストで塗りつぶす場合もどちらにも向いています。
発色やにじみなど、描く際に何を重視するか、また求める表現によって画材の選び方はいろいろです。
今回の記事も参考にしていただきながら、皆さんの好きな表現ができる紙を見つけてくださいね!
クオバディス・ジャパンがおすすめの紙はこちら!
「ペイントオン スムースホワイト」(クレールフォンテーヌ)
今回の書き比べで使用した「ケント紙」はこちらのペーパー。表面がとにかくスムースで、毛羽立ちしづらい強い紙です。マルチメディアペーパーなのでマーカーだけでなく、他の画材と一緒に使ってもOK!厚手なので裏抜けの心配もなく、カードづくりや工作にも向いています。(250g/㎡)
「ロディアタッチ マーカーパッド」(ロディア)
「マーカーパッド」という商品名の通りマーカー向けに開発されたペーパー。紙の表面の平滑さはもちろん、紙の白さ、いわゆる白色度がとても高いので発色が鮮やかです。アルコールマーカーを使用してもにじみが少ないのが特長です。(100g/㎡)
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紙は、今回試した中で相性の良かったケント紙を使用します。
・ケント紙
今回は「ペイントオン スムースホワイト」をA6サイズ(105×148mm)にカットして使用します。
絵を描く紙は、しっかりした少し厚めの紙を使用すると、よれにくく仕上がりもきれいになります。
・色画用紙
カードを閉じたとき、表になる面に貼り付けます。カードと同じサイズか、少し大きめでもOKです。
・はさみ
・のり
1)紙を半分に折り、絵を描く
紙の半分に折り目を付け、ケーキの絵(輪郭)を描きます。
この後ABTなどで色をつけるので、乾くと耐水性のある「筆之助」で描くと線が滲まずおすすめです!
また、絵はなるべく折り目の位置を中心に左右の幅が同じになるように描くと、後で切り抜いたときにきれいに飛び出します。
2)絵に色を付ける
絵に色をつけていきます。お好みのABTで一番濃くなる部分に少し色をのせてから水筆で伸ばすように塗っていくと、ふんわりとした色に仕上がります。
あえて線から少しはみ出すように塗ってもラフでかわいらしい印象に。
プレイカラードットで水玉模様を描くと一層華やかに!
3)はさみで切る
描いた絵をよく乾かしてから、絵が外側に向くように折り、ケーキの線の部分を切ります。もう一度反対に折り返し、カードは谷折り、ケーキは山折りになるように折り曲げます。
4)裏にもう一枚紙を貼る
閉じた時に表になる面に、紙を貼ります。
どんな紙でもいいですが、裏側が透けないようなある程度厚みのある紙がおすすめです。
開いたときにケーキの切れ込み部分から後ろに貼った紙が見えるので、裏表で色や柄が違う紙を張り付けても可愛いです!
今回は特殊加工された紙の風合いがおしゃれな「パピエデュモンド」を貼り付けました。
完成!
飛び出すカードは、切れ込みの入れ方を変えるだけでこんなバリエーションも!
簡単に作ることができるので、季節や用途に合わせてアレンジしてみてください。
おわりに
「この紙にこの画材は絶対にだめ!」ということはないですが、画材によっておすすめの紙、相性の悪い紙はあります。相性の良い画材を使うと作品の仕上がりがぐんと変わってきます!いろいろな紙に描いてみると新しい発見もありますので楽しいですよ!
次回は、vol.3画材別おすすめの紙<水彩編>!お楽しみに!