前回から「画材別のおすすめの紙」を紹介していますが、今回は水彩編です。
水彩といえば、絵の具で描く本格的な水彩画はもちろんですが、ABTのような水性マーカーで手書き文字やちょっとしたイラストを描く「水彩レタリング」も人気ですよね。ここ何年かで水彩が気軽でとても身近なものになっている気がします。
今回はそんな水彩に適した水彩紙とその楽しみ方、最後におすすめの紙を使った簡単レシピを紹介します!
■なぜ水彩紙がよいの?
画用紙に水彩絵の具で描いたら、絵の具が染みこみすぎて、まだらになってしまった!なんていう経験はないでしょうか。
水彩は一般的な画用紙にも描けますが、なぜ水彩紙がより良いかと言えば、にじみ止め加工、専門用語で言うと「サイジング」がしてあるからです。サイジングとは、にじみを防止するための紙の表面加工のことで、デンプンやゼラチン由来のサイジング剤を塗布しています。それにより、絵の具の浸透を適度に抑え(弾かせ過ぎず、吸い込ませ過ぎず)、にじみやぼかしなどいろいろな表現をすることを可能にするのです。
ちなみにサイジングは、湿気に弱く、湿度の高い場所で保管していると、その効果が劣化してしまいます。その状態を「水彩紙が風邪をひく」と表現することも。保管する際は、高温多湿な場所を避けることと、もし劣化してしまったら市販のサイジング剤を塗るのもおすすめです。
■水彩紙の種類について
・素材
水彩紙に表記されている「コットン100%」や「セルロース100%」、素材は、描きたい技法や仕上がりに影響するため水彩紙を選ぶ際の重要なポイントの一つです。
水彩紙の素材は、コットンパルプや木材パルプがメインです。
コットンパルプは、絵の具を保水する性能が高く、耐久性、発色性も良いため重ね塗りに向いていますが、高級用紙になります。
木材パルプ、特にセルロース100%の紙は、丈夫で買いやすい価格のため、学生からアーティストまで人気です。近年、製紙技術が進化したことでコットンパルプにも劣らぬ描写を実現しています。
・肌目
水彩紙は表面の凸凹によって種類が分かれます。肌目と呼ばれ、「荒目」「中目」「細目」に分類されます。ぱっと見るとわかりませんが、触ってみるとその違いがわかります。
大きく凸凹しているものを「荒目」、凸凹が少ないものを「細目」、その間は「中目」となります。
肌目については、好みと作品の仕上がりのイメージによって選びます。大胆で個性的な表現ができるのは「荒目」、繊細な描画やレタリングなどにも向いているのが「細目」、初心者の方には、水彩らしい仕上りと扱いやすさで「中目」がおすすめです。
ちなみに肌目は基準があるわけではないので、メーカーによって多少違います。同じ「中目」と書かれた商品でもメーカーによって「荒目」よりのものもあれば、「細目」よりのものもあるのでご注意ください。
・厚み
一般的に水彩のように水分を含む画材を使用する場合は、紙が波打たないよう200g/㎡~300g/㎡の厚手の紙が推奨されています。
300g/㎡程度の厚みがあると、重ね塗りや細かい描き込みもOKになり、たっぷりの水分を吸い込んでもよれたり、紙剥けしたりしにくいです。また、厚みがあればあるほど長期保存にも向くことも確かです。
・仕様
リングタイプ、パッドタイプ、ブックタイプの他に、水彩紙ならではの「ブロック(4面糊付け)タイプ」や好きなサイズにカットできる「ロールタイプ」もあります。
反りを防ぐためにパッドの4辺を糊で固定してあるタイプです。水張り(注)せずに使えるので便利です。描いた後は、よく乾かした後、ペーパーナイフなどで剥がします。
水彩紙を巻いた状態で販売しているのがロールタイプです。自分の好きなサイズにカットして使用できます。規定のサイズにとらわれずオリジナルのサイズの作品を描きたい時や、大きな作品づくりにぴったりです。こちらは水張りが必要です。
描く前に塗らした状態の紙を木のボードなどに貼って固定する手法。水張りをすることで水を多く使用する画法でも紙が反らず、波打たないようになります。
一枚売りやスケッチブック、天糊のパッドなど、使用しているうちに波打ちやすい紙に用います。
■水彩を楽しむヒント
ここでは知っておくとより水彩が楽しくなるちょっとしたテクニックや気をつけたい点をご紹介します!
・水彩境界
絵の具の水分量が多いと、ふちの部分に絵の具が溜まって縁取りのようになることを水彩境界(エッジ)といいます。
好みにもよりますが、水彩らしさを際立てる要素の一つとしてわざと水彩境界が出るように色を塗ることもあります。絵の具を吸いにくい紙(サイジングが強く施されているもの)で時間をかけて絵の具を乾かすと乾いたときによく出ます。
・ウェットオンウェット
絵の具で塗った色が乾かないうちに別の色を重ねることで色どうしの混ざりやにじみを生む技法。水分を多く含む水彩絵の具ならではの技法です。「ウェットインウェット」と呼ばれることも。
・カラーペーパー
透明水彩を使う上で、用紙の色が下地として全体の色をまとめる効果を持ちます。淡めのカラーペーパーを選ぶと絵の具の発色もそこまで邪魔しません。不透明水彩の場合、濃い色の紙でも鮮やかに発色をし、白い紙に描いたものとはまた違う独特の表現ができます。
あと、水彩をするときに意外と気になるのが手の脂。特に水分を多く使う透明水彩をするときに紙を沢山触ってしまうと、指の皮脂が紙についてしまい、そこだけ微妙に絵の具をはじいてしまう、なんてことも・・・。
紙はなるべく触らないようにすると本来の色の乗りを邪魔しません。指紋が気になるような紙は、手袋をして扱うのもよいかもしれません。
■水彩初心者にもおすすめの用紙
クオバディス・ジャパンが水彩におすすめの紙はこちら!
<新製品>アクアパッド(クレールフォンテーヌ)
ぱっと見て水彩用紙とわかるキャッチーな表紙デザイン。セルロース100%の水彩紙パッドで、紙目は中目です。表面が丈夫かつ300g/m2 の超厚口なので、たっぷりの水分を使う技法「ウェットオンウェット」にもおすすめです。高品質な用紙ながら、枚数たっぷり、お求めやすい価格が魅力です。
マルチメディアペーパーの「ペイントオン」の中でも水彩におすすめのグレインホワイト。
セルロース100%で、紙目はほどよい凹凸の中目です。250g/㎡で厚みも十分、白色度が高いので透明水彩にもおすすめです。マルチメディアペーパーなので他の画材と一緒に使ってもOKです。
■作品レシピ
・読書の秋!水彩紙とABTで「しおり」をつくってみよう!
~「スプラッシュ」テクニックを使用したしおりづくりとアレンジをご紹介~
用意する物
・水彩紙(今回はアクアパッドA5を使用)
・ABT(お好みで3~5色程度)
・クリアファイル
・霧吹き
・穴あけパンチ
・飾り用のリボン
①クリアファイルにお好みのABTで色を塗ります。
色をランダムに、紙の大きさと同じくらいの広さまで塗ります。
②霧吹きなどで水をかけ、全体的に湿らせます。
かけすぎるとインクがすべて流れてしまうので注意!
③クリアファイルを紙に押し付け、インクをうつします。
押し付けた後、上から指でさらに押し広げるとインクが広がり、色の混ざり、にじみが生まれます。
この時に水彩紙の下に大きめの紙などを敷いておくと机も汚れません。
④よく乾かし、好みの大きさでカットします。
⑤上部に穴をあけ、リボンを通せば完成です!
退色や色写りが気になる場合は、ラミネートをすると長持ちします!
【もっと楽しむヒント】
残った部分はクラフトパンチで抜くとカラフルなフレークに!
沢山挟んでラミネートしたり、手帳のデコやスクラップブッキングに使ったり、ハンドクラフトに大活躍します!
気軽に楽しめるのが魅力の水彩!水彩紙は画材店に行っても種類も多く、複雑でちょっとハードルが高いように感じるかもしれませんがいつもの画用紙を水彩紙を変えるだけで仕上がりの違いは歴然!今回の記事を参考にして、素材や肌目などぜひお気に入りの水彩紙を見つけてみてください。
次回は、vol.4画材別おすすめの紙<鉛筆・色鉛筆編>!お楽しみに!